「カエザルのものはカエザルに返せ、て知ってる?作家だから聖書くらい読んでるよね」
と言った。すぐには意味が分からなかった。
「どうせ時間も労力も費やすなら、せめて、本人に返そうか」
「どういう意味ですか?」
と堪りかねてきいた。彼は澱みなく答えた。
「その柴田さんって、菅野さんにとって誰の代わりだと思う?」
柴田が本当に酷いと思いながらも、主人公にも問題あるなと読んでたけど、柴田を誰かの代わりにしてるなら(柴田は酷い男だけど主人公の抱えてる問題は)主人公に問題はある。ここで10年前と2年前と現在が繋がる大事な会話。